Renovation of new wild

東京都谷根千エリアに位置する築43年RC造マンションの最上階1室。建物群を望む抜けのある眺望が魅力的だ。68.3㎡で少し変わったL型住戸は、2人暮らしには余裕があり、余白の活用を含め提案して欲しいという建主からの要望に、正円の壁を設けることで住宅機能的な空間と、余白的空間に分ける計画を提案した。円形の壁によって諸室の適度な距離感を確保しつつ、シームレスな繋がりのある空間をつくろうとした。

洞窟? 心象風景を想起させるような空間をめざす


バブル以降の世代にとってマンションが林立する都内の風景は当然のようにある環境のようなもので、そこに好みの住まいを見つけて住み着く行為はかつて洞窟を住処に見立てて住み着いた人類と同じような感覚ではないか?そんなことを日頃から感じていたところ、この部屋を道路から見上げてみると、まさにカッパドキアなどの洞窟住居ように見えた。そこで住宅的機能が不要な円の内側は、素材の統一や凹凸、照明のあり方など洞窟的な空間作りを意識することで、住居から離れ抽象的な空間を目指した。

特定の誰かのためだけど、これからの 全ての人のための住まい

正円による空間構成と抽象的設えにより、nLDKという間取りの考え方に始まった近年の住宅らしさがフィットしない施主2人の、もしくは現代のすべての暮らしにとって、どのような住まいの可能性があるのかを、ここでの暮らしを通して見出していく可能性を秘めた住宅となったと思う。何年後かに暮らしぶりを伺うのが楽しみだ。

 

設計:a.d.p

施工:a.d.p

所在地:東京都台東区

設計:2023年1月

工事:2023年6月

竣工:2023年9月

写真:Takuya Seki

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